遠心力は存在するのか?という疑問に分かりやすく答える

おはこんばんにちはsenehataです。

 

今回は遠心力は存在するのか?というテーマの記事を書こうと思います。と言うのも、遠心力は見かけの力と言いますがいつも頭の中で存在するのかしないのかこんがらがるのでここで一旦分かりやすくまとめた方が良いなと思ったので、

 

さて、遠心力とは一言で言うと回転座標系において向心力とは逆向きに釣り合う力のことを言います。

 

今からこの遠心力について分かりやすく深掘りしていきましょう。

 

直線運動する物体で考えてみる

まずは理解を容易にするために回転座標ではなく、直線運動する物体を考えてみましょう。

皆さんは電車は人生に一度は乗ったことがあると思うのですが、出発時に体が出発方向とは逆に動くのを経験したことがあると思います。

 

それは慣性の法則(運動の第一法則)という経験則によって説明することができます。

慣性の法則は「すべての物体は、外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。」(1)と定義されている。

 

では、もし目隠ししていて自分が電車の中にいるかわからない状況を考えてみます。そして、電車が出発すると目隠しした人はいきなり謎の力によって体が倒される経験をすることになります。

これは目隠しした人からしてみれば慣性の法則が成り立たないと言えます。なぜなら、自分は静止していたのにいきなり後ろに倒される訳ですから、静止している物体は静止状態を続けるという法則に反します。

いきなり後ろに倒されるっていうのは、目隠しした人からすれば何か力が加わったからと考えなければ説明がつかないので(そうしないと慣性の法則が破綻する)、後ろ向きに何らかの力が加わったと仮定することになります。

この仮定した力を慣性力と呼びます。

 

慣性系と非慣性系

ところで目隠している人を電車の外から観察している人がいるとします。まあ駅のホームとかが分かりやすいでしょうかね。

駅のホームから、電車が出発する時の電車内の目隠しをしている人を見てみるとします。

出発する瞬間、目隠ししている人が後ろ側(出発進行と逆側)に倒れているのを確認できますが、これは「静止している物体は静止状態を続ける」という慣性の法則に従っているからだと理解することができます。言い換えれば元居た場所に止まり続けようとする性質と言っても良いと思います。

 

このように慣性の法則(運動の第一法則)が成り立つ世界(座標系)のことを慣性系と言います。

 

逆に目隠しした人の視点から見た世界は、いきなり後ろに倒れるような慣性の法則が成り立たない世界です。(ここでのポイントは目隠ししている人は発車し始めた電車内にいると気づいていない点がポイント。)

このような慣性の法則が成り立たない座標系を非慣性系と言います。

 

また、先ほど説明した慣性力は見かけの力(fictitious force)と呼ばれます。慣性の法則が成り立たない非慣性系において、慣性系として考えたいから、後から導入する力だからです。

 

遠心力は存在するのか

さてでは遠心力について考えてみましょう。

遠心力は今までの直線運動とは違って、回転運動の中で現れる力です。

 

身近な例で言えば、水が入ったバケツを振り回すと水が落ちてこないけど、これは遠心力が働いているからという説明が良くされます。

 

冒頭で言いましたが、もう一度遠心力とは何かというと、遠心力とは回転座標系において向心力とは逆向きに釣り合う力のことを言います。

ただ、もう少し厳密に言うと、「慣性系に対して回転している回転座標系において作用する慣性力の一つである。(2)」と言えます。

 

一度、バケツの中の水の視点で考えてみましょう。仮定として、水からは実は回転しているバケツの中に入っているのではなく静止しているバケツに入っているように見えるとします。すると、なぜか中心向きへの向心力が働いているにも関わらず中心になぜか動かず静止していると言う、また慣性の法則が破綻した状況が発生します。

よって慣性の法則を破綻させないために、向心力と同じ強さで逆向きである向心力と釣り合う力があると仮定します。そうすれば静止しているのは力が釣り合っているからであるとバケツの水視点では説明がつきます。つまり、慣性の法則が破綻せずに済みます。ちなみにここで後から釣り合いを持たせるために仮定した力を遠心力と言います。

 

もうお気づきの人もいると思いますが、バケツの中の水視点の世界は非慣性系です。

では、バケツの水を外から観察している人視点で見たバケツの水には遠心力は加わっているのでしょうか?

 

答えはNOです。

回転運動している場合は単純に真ん中向きの向心力が働いているだけで、遠心力は働きません。(慣性系(バケツと一緒に回転しないで外から観察している人)からバケツの水を観察した場合。)

 

つまり、遠心力は存在するのか?と問われたら、慣性系では存在しないが、非慣性系では慣性の法則を破綻させないために見掛けの力として存在する力である。という回答が適切であるということになります。

見方によって力が現れたり消えたりするのは面白いですね。

 

 

(少し発展)バケツの中の水ってなんで落ちないの?

ここからは発展的な内容ですが、ここで疑問が浮かぶと思います。真ん中向きの向心力しか働かないんじゃ水は落ちてくるんじゃないか?と。

実は、向心力はバケツの中の水の運動の向きを変えることのみに使われるので、水はバケツの中で円運動を続けることになります。なので、水はどちらかというと、バケツと一体になって回転運動方向に常に動くことになります。ただし、バケツの回転する速度がゆっくりになると向きを変える向心力は小さくなり水は落ちます。(3)(4)

ちなみに向心力は

$$F=mrω^{2}=m\frac{v^{2}}{r}$$

なので、物体の速さに依存します。

 

ところで、バケツの水が落ちないようにバケツを回転運動させるにはどのくらいの速度で回せばいいのでしょうか。これは物体をどのくらいの速さで回転させれば回転運動を継続できるのか?という問いと同じです。

この問いにはすでに他のサイトが答えてくれているので記事を貼っておきます。

円運動の問題の解き方【一周する条件を正確に考えてみた】
今回はこの悩みについて話したいと思います。 1周する条件は「糸がたるまない」や「面から離れない」などの説明がありますが、本当の条件はこのように表せます。 これが本当の条件です。 ...

答えを先に言うと、

$$v_{0}\geq\sqrt{5gr}$$

の条件を満たすことで回転運動を継続することができます。(手を回す時の抵抗がないと言う理想状態ではあるが)

 

そして、実は回転運動の慣性力は遠心力だけではなく、コリオリ力という力も関わってきます。また、それぞれの慣性力は数式で導くことも可能です。これについては以下の記事で詳しく解説されています。

回転座標系での運動方程式
固定座標系から回転座標系に運動方程式を変換すると,慣性力である遠心力とコリオリ力が数式的に現れます。計算は面倒ですが,いったんできるようになるとおトクだと思います。

 

 

参考文献

(1)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AE%E7%AC%AC1%E6%B3%95%E5%89%87

(2)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E5%BF%83%E5%8A%9B

(3)https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0602/

(4)https://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/mech/enn/kousinn.html

 

 

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