「音楽を聞きながら勉強をした方がいい」「クラシック音楽は知能向上に繋がる」など様々なうわさを聞いたことがあると思います。
今回は、モーツァルト効果は勉強に役立つのか。それを「なぜ?」まで突き詰めて解説しようと思います。
また、モーツァルト効果という心理学の現象についても解説していきます。(結論を先に言うと音楽は使い方によっては、勉強の妨げにもなり得るし、勉強の効率化にも繋がります。)
※結果だけを早く知りたい方は、下の方にある「まとめ」から見て下さい。
1.モーツァルト効果って何?
モーツァルト効果とはローシャーら(1993)が発表した報告で唱えられたもので、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調」を10分間聴いた後に、大学生らが空間的知能を測定する検査を行うと、リラクゼーションテープを聴いている状況や、無音状態よりもIQが8-9ポイント上昇したというものです。
それは、聴取後の15分後に効果が切れると明記してありましたが、マスコミにより「モーツァルトの音楽を聞くと頭が良くなる」という拡大解釈と共に広まってしまいました。
その後、シュレンバーグ(Schellenberg)らによって、テンポが早く、且つ長調の曲の方が、空間課題の得点向上に繋がることが分かりました。この為、モーツァルト効果とはモーツァルトの曲に限らず、テンポが早く明るい曲を聴くことによって空間課題に限らず認知的な課題の処理に好影響を与えるものであると主張しました。
(この場合、モーツァルトの曲は長調でテンポの良い曲が多い。)
2.音楽と認知能力(読解力)の関係
その後、トルプソンら(2011)はモーツァルト効果と読解力の関係について研究しました。
その研究内容は、モーツァルトのピアノソナタ(K.488)をテンポと音量を変化させた次の4つのバージョンに編曲させて、音楽が読解力にどのように寄与するかを調べたものです。
2.テンポ遅い・音量大きい
3.テンポ速い・音量小さい
4.テンポ速い・音量大きい
この場合、「テンポ速い・音量大きい」が他のパターンよりも読解力が下がり、テンポ遅いパターンは成績の低下は無し。一番高い成績を残したのは、「テンポ速い・音量小さい」のパターンでした。
トルプソンは、この実験内容をこう解釈しました。まず、「テンポ速い・音量大きい」パターンは聞き手の注意資源をかなり消費してしまい、読解力への注意資源が減ってしまい成績が落ちる。しかし、「テンポ速い・音量小さい」パターンは、テンポが早くとも音量が弱いと注意資源をある程度保ち、速いテンポが適度な覚醒(体や心の活性化)を生む。よって、成績が上がる。と主張しました。
3.音楽により起こる感情と作業効率の関係
聞き手にとって聞き馴染みのある好みの音楽の場合はどうでしょうか。一般に、好みの音楽は効率よく処理されて、認知課題への干渉量も減り、学習効果の向上に繋がると考えられているそうです。
つまり、好みの音楽を「ながら聞き」していると、音楽は自然に流れ込み、音楽へ余計な注意が向かなくなるようになります。これによって聴き手に快刺激を与えることができ、また、適度な覚醒度(体や心の活性度)を維持し、やる気や意欲を生み出します。
裏を返せば全く聞き馴染みが無く、好ましくない音楽は、先が予測しにくく快気分になることができません。つまり、音楽を聞くこと自体に注意配分が取られてしまい、逆効果になってしまいます。
4.まとめ(大事)
今までのまとめとして、どのように音楽を聞くことによって、勉強などの作業の効率を高めることができるのでをまとめます。
・まず、自分の聞き馴染みでお気に入りの曲を聴く。(聞き馴染みのないものだと注意が音楽に多く持ってかれる。)
・そして、音量はなるべく落とす。(音量が大きくても注意が音楽に多く持ってかれる。)
・また、その曲が明るく、テンポが速い曲であるとより一層良い。(シュレンバーグの研究より)
そして、覚醒度が上がることによって学習効果が上がることが研究で示唆されているので、勉強に対するやる気が大きく低下している時に、上記の条件を守って音楽を聞きながら勉強をすることで勉強の効率化を特に図れるでしょう。
最後に、万人にとって音楽が勉強に貢献してくれる訳では無いので、そこはご自身で相性を見極めてみて下さい。
5.参考文献・引用文献
以下の本の第6章を参考とさせていただきました。音楽心理学において他にも多様なジャンルを解説してくれています。良ければご一読を。
音楽心理学入門 著者:星野悦子 出版社:誠心書房
Rauscher,F. H.(1993) Music and spatial task performance. Nature
Thompson,W.,(2011) Fast and loud background music disrupts reading comprehension. Psychology of Music
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