前回から引き続き国富論の要約をする。
国富論の要約 vol.2 通貨の起源
前回に引き続き国富論の要約をしていく。 前回の記事 通貨の起源 分業が確立した後は、賢明な人であれば未来のために他者との交換で断られないと思えるものを自分の生産するもの以外にある程度保有しておくのが自然だろう。とスミスは考える。 その手段と...
物の価値とは何か
スミスは物の価値の源泉を労働であるとした。(労働価値説)
商品の価値は、自分で使うか消費するためではなく、他の商品と交換するために保有している人にとって、その商品で支配・購入できる労働の量に等しい。したがって労働こそが、すべての商品の交換価値を測る真の尺度である。
この説明には、そもそも商品は誰かの労働の生産物である。と考える背景が存在する。
そして、この労働価値説を二つに細分化した考えをスミスは混在しながら持っていた。それぞれは投下労働価値説と支配労働価値説と呼ぶ。
まず投下労働価値説から解説する。
物の真の価値、つまり、ものを入手したい時に本当に必要になるのは、それの生産に要する手間であり、苦労である。
ただし社会では、その「手間」を金銭や財貨で交換する。すなわち、財貨にもある量の労働の価値があると考えることができる。
次に支配労働価値説を解説する。
富を所有し、何か他の生産物と交換したいと望んでいる人にとって、富の価値はそれで購入できるか支配できる労働の量に全く等しい。
どちらかというと、労働力を支配しコントロールする経営者側から見た考えなのだろうか。
ここまで商品の価値を労働で考えたが、労働の質が違ったり、異なる労働の量を比較するのが困難などの理由があって、社会では一般に商品の価値を金銭の量で考えることが多くなったようだ。
ただし、スミスにとって商品の真の価値は労働であるという部分は変わらないと強調していた。
次回記事
国富論の要約 vol.4 労働の賃金について
前回から引き続き国富論の要約を行う。 賃金の増大と国富の増大 労働の賃金は労働者と雇い主の間で結ばれる契約によって決まるが、両者の利害は一致しない。労働者はできれば高い賃金を望むし、雇い主はできれば低い賃金を望む。こうした構造上、両者で対立...
参考文献
アダム・スミス/山岡洋一 訳「国富論ー上」、日本経済新聞出版社、2007年
労働価値説 - Wikipedia
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